
台湾のドキュメンタリー映画「ポスターは今も残っている」の上映会が8月3日、京丹後の「まちまち案内所」(京丹後市峰山町杉谷)で開催された。
同作は、今年4月に取り壊された台湾東部、関山の「中華大映画館」を舞台に、関山の住民の記憶を残し、世界で今も営業を続ける老舗映画館を守ることを目指して製作されたもの。台北から移住した若者が、台北にある祖父の築100年の家と、関山の古い映画館が壊される知らせを同時期に聞くことから、物語は始まる。
同日、豊岡劇場(兵庫県豊岡市)で世界初上映し、2回目の上映が京丹後で行われた。企画の背景について、上映会を主催した「まちまち案内所」の坂田真慶さんは「空き家、移住のことなどいろいろな要素が入っている映画だと感じた。台湾と日本のローカル同士、いろいろ面白い共通点が見えるかな、と思った。せっかく豊岡に来てくれたのなら、こっち(京丹後)でもやってみたいと思った」と振り返る。坂田さんは同作品を知り、4月に関山を訪問。ゾウ・シンエイ/MoMo(以降MoMo)監督に舞台となった場所を案内してもらったという。
上映後は坂田さんとMoMo監督の対談が行われた。作品に登場する人は関山の住民で、「事前の打ち合わせ通りにいかないことがほとんどだった」と明かす。「約束をしていた人がいなかったり、想定していないことが起きたり、予定通りにはいかなかったが、それもそのまま撮影した」とMoMo監督。台湾と日本のローカルの共通点については、「日本の方が古いものを自分たちで守ろうという人が多い気がする。台湾にもいるが、ごく一部。この映画に登場してくれた人は守ろうとしていたけど、ほとんどの人がそうではなかった」と話す。
参加者からは、「自分も丹後の古きよきものを守ろうとしている。同じ志を持つMoMo監督に会え、直接話せて良かった」「住民参加型で日常を描く映画の撮り方が面白い。こういうプロジェクトが町にあればいいと思った」「台湾が好きで見に来た。これをきっかけに、また台湾に行きたい」などの声が聞かれた。
MoMo監督は「台湾ではまだ上映できていない。『誰にも見てもらえない、映画は死んでしまった』と思っていたが、見てもらえて映画が『生き返った』と感じた。劇場が取り壊されたことも、映画を見てもらって、豊岡劇場や京丹後につながっていくと考えたら、悪いことじゃないかもしれない。勇気づけられた」と締めくくった。