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【まちの未来を考える人 vol.1】 飲食やモビリティー、多角的経営に取り組む「ぼんぼん」の澤田秀太さん

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 伊根町で、1960年式の「ダイハツミゼット」に電動キックボードを載せている人がいる。まちづくり会社「株式会社ぼんぼん」(伊根町日出)を営む澤田秀太さんだ。「婆bar-朱美-」「鮨(すし)いちい」「道の駅舟屋の里伊根」で土産販売、電動キックボードシェアリングサービスなど、多くの事業を経営している。

 「せっかく住む町なので、良くしていきたい」と澤田さん。生まれは伊根町。地元の電気店「沢田電気」の跡継ぎ。「会社名の由来は出自から。ぼんぼんってよく言われて、そうだなと思った」と爽やかな笑顔で話す。

 伊根町は国の「重要伝統的建造物群保存地区」に選定され、「日本で最も美しい村」連合に加盟している。「舟屋」が200軒以上並び、海外からの観光客も多い。人口は2000人ほど。観光客は年間30万人以上が訪れるという。

 「大勢が来るのに、夜は開いている店が少なく、泊まっても宿で過ごすしかない。『鮨(すし)いちい』でご飯を食べたお客さまが飲める場所として『婆bar-朱美-』をオープンした。正直赤字続きだが、自分にできることがしたい。明かりをともすため、続けていくつもり」と話す。

 電動キックボードのシェアリングサービスは4月1日に始めた。道幅が狭い所が多く、「歩いて散策することの多い伊根町にはピッタリのサービス」だという。海外観光客を中心に利用者が増え、当初は5台で始めたキックボードは現在、15台まで増やした。

 電動キックボードは充電式。毎日使用後にチェックして充電し、台数の偏りがないように運搬している。運搬に使うのは1960(昭和35)年式の「ダイハツ・ミゼットオート三輪」。国内で2台しか動いていないという。

 同車と出合ったのは数年前、豊岡市の花火大会に行ったときだった。「藤原瓦店」(豊岡市)の店主が所持し、当時は走れない状態だったという。車を借り受け、3年ほど自力で修理して、今年、走れるようになった。「朽ちていく車をもう一度走らせたかった。無事車検が通って、持ち主にも乗ってもらえて良かった。この車をもっと大勢に見てほしい」と澤田さん。インスタグラムで動画を投稿したところ、50万回以上再生された。

 町なかで乗っていると観光客が振り向き、写真を撮られるという。「新しい観光コンテンツになっているのかもしれない」と澤田さん。

 取材中、澤田さんはすれ違う地元の人たちとよく話していた。ただやりたいことをやるのではなく、「町が良くなるため」「困っている誰かを助けるため」、日々アンテナを張り巡らせ、やるべきことに取り組む姿が印象的だった。(取材・文:足立眸)

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